コラム

知っておきたい!口腔疾患が全身疾患に与える影響

口腔疾患が引き起こす問題は、ただ口腔内だけにとどまらないことをご存知ですか?
最近の研究で、口腔疾患の中でも代表的な歯周病が全身疾患のリスクを高めることがあると証明されています。
この記事では、その驚くべき関連性について解説します。

■1.歯周病とは

歯周病とはプラーク(歯垢)の中の細菌によって歯肉に炎症をひき起こし、やがては歯を支えている骨を溶かしていく病気のことです。この歯周病は中高年の90%近くが罹患(りかん:病気にかかること)していると言われております。この歯周病が最近の研究によると他の全身疾患と関連していることが分かってきました。

■2.歯周病と全身疾患の関連

歯周病と全身疾患の関連については次のようなことがわかっています。

細菌が体内に進入することを菌血症といいます。一過性の菌血症は、抜歯、スケーリング(歯石とり)などの歯科治療だけでなく、咀嚼運動(食物をかみ砕くときの顎の運動のこと)やブラッシングによっても引き起こされることが報告されています。

歯は硬組織が体の中と外を貫いている器官で、その硬組織と軟組織をつなぐ境界が歯肉です。歯肉と歯との間の溝を歯周ポケットと言います。
そこには常に多くの細菌が存在しており、炎症を起こすと歯肉の上皮組織の断裂が起き、容易に細菌が侵入してきます。その細菌が血流にのり、全身にまわって各臓器に定着すると何らかの全身疾患が引き起こされる場合があります。
健康な方では、免疫機構により細菌は排除されますが、何らかの疾患をお持ちの方や、高齢者は抵抗力が弱く、細菌を十分排除できずに定着してしまう恐れがあります。

口腔細菌と関連する代表的な全身疾患について説明します。

2-1.敗血症、感染性心内膜炎

口腔内が不潔になると歯の周囲にプラーク(歯垢)が蓄積し、歯肉に炎症が生じて腫れあがります。そのような状態で、咀嚼運動やブラッシングを行うと口腔細菌が血管内に入り菌血症を生じます。全身状態が悪く抵抗力が低下している高齢者では、敗血症に移行することもあります。
一方、心不全や心臓の弁置換手術後の高齢者では、血管内に入った口腔細菌が心内膜や人工弁に付着、繁殖し、感染性心内膜炎を発症することがあります。本疾患で亡くなった患者の心内膜を調べると原因菌の約4割が口腔細菌であったという報告もあるので、心疾患を持っていたり免疫力の低下した高齢者は、口腔衛生管理に特に注意する必要があります。

2-2.心疾患、脳卒中

動脈硬化の主要な原因は、遺伝的要素、脂質異常症(高脂血症)、高血圧などとこれまでは考えられていました。しかし、最近の研究では歯周病関連細菌やその代謝産物、歯周炎により産生された炎症性サイトカインなどが動脈内膜に侵入し、血管内皮細胞を傷害して動脈硬化を悪化させるのではないかと考えられています。
また、ある歯周病原菌は血小板の凝集機能をもっており、凝集した血小板がはがれ、血流に乗り血栓を引き起こし、動脈の梗塞を引き起こす可能性も考えられています。

2-3.糖尿病

最近、歯肉の炎症自体が、糖尿病を悪化させる要因のひとつになっていると考えられています。炎症反応によって生じたさまざまな物質や歯周菌が産生する毒素が毛細血管から血液中に入り込み、インスリンの機能を障害していると考えられています。
一方、糖尿病で血糖コントロールがよくないと、感染に対する抵抗力が低下し、口腔内細菌が増殖しやすいことから、感染症の一つである歯周病に悪影響を与えます。

2-4.口腔細菌が誤嚥性肺炎の原因となる

要介護高齢者などでは嚥下反射(口の中でひとかたまりにした食べ物を、のどから食道まで一気に運ぶ運動を起こす反射のこと)に障害のある方が多く、口腔内に細菌が多いとそれが肺に入り肺炎の原因となります。
歯周治療や口腔ケアを行い、口腔内の細菌を減らしておくと、たとえ誤嚥しても、肺炎になる可能性を下げることができます。また、誤嚥性肺炎は、高齢者の寝たきり状態を長期化させる原因として重要な疾患です。

2-5.低体重児出産や早産

高齢の方とは関係ありませんが、歯周病原菌の病原因子刺激によって産生されたサイトカイン(インターロイキン、インターフェロンなど)の作用として、妊婦に対して低体重児出産(2500g以下)を促すことが報告されています。
ご家族の中に妊娠中の方がいらっしゃれば注意を促してください。

■3.歯周病の治療は日々のブラッシングが重要

歯周病との関連でよく言われている疾患について述べました。
このように、日々のブラッシング、歯周病の治療は全身の健康を考えたうえでも大変重要です。 歯科医院への通院が難しい高齢者の方は、訪問歯科によるプロフェッショナルケアをご検討ください。
当院は四街道市を中心に、訪問歯科を専門として行っております。ご興味ございましたらお気軽にご相談ください。

まとめ

口腔疾患と全身疾患の関連性を理解し、日常の口腔ケアを改善することで、全身の健康維持に役立てることができます。定期的な歯科検診を受け、口腔ケアを日常生活の一部とすることで、全身の健康を守る一歩としましょう。

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